RAID10とは?RAID5、RAID6との比較や仕組みの基礎知識解説
「RAID」(レイド)は、複数のHDDを組み合わせて1つのドライブのように扱うことができる技術です。特にビジネスシーンにおいて、HDD故障・データ喪失による機会損失を避けるため、安全性や信頼性向上の観点から活用されています。
このRAIDにはいくつかの種類(レベル)があり、それぞれ特徴が異なりますが、今回は、RAIDのうち「RAID10」の仕組みやメリットについて解説します。併せて、比較されることの多いRAID5、RAID6との違い、データ復旧時の注意点などについてもご紹介します。
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RAIDとは?
そもそも「RAID」とは、ひとことで言えば「複数のHDD(ハードディスクドライブ)を1つのドライブのように認識・表示させる技術」のこと。サーバを安定稼働させ、信頼性を高める技術として、企業・製品サイトなどのビジネスシーンに利用されています。
簡単にRAIDの特徴と種類(レベル)について挙げると以下のようになります。
<RAIDの主な特徴>
- 複数のHDDに分散してデータを記録(書き込み・読み込み)することで高速化が図られる
- RAID内のHDDが故障したときでも、故障したHDDを交換すればデータ復旧が可能
- 故障時や復旧中でも、問題がない他のHDDは稼働するため、サーバ稼働の安定化につながる
<よく使われるRAIDの種類(レベル)>
- RAID0(ストライピング)
- RAID1(ミラーリング)
- RAID5(分散パリティ)
- RAID6(複数分散パリティ)
- RAID10/RAID1+0(RAID1とRAID0を組み合わせた方式)
それぞれのRAIDレベルにはメリット・デメリットがあります。次項からは、本題であるRAID10について、詳しく見ていきましょう。
RAID10(RAID 1+0)とは?仕組みの基礎知識
RAID10とは、RAIDレベルのうち、RAID1(ミラーリング)とRAID0(ストライピング)の2種類を組み合わせたものです。RAID1で同一データを複製してHDDに記録(ミラーリング)し、RAID0でデータを分散して記録(ストライピング)します。この仕組みの特徴から「RAID10」または「RAID 0+1」と呼ばれ、RAID1とRAID0のメリットを併せ持つのが特徴です。
ここからは、RAID1とRAID0の特徴を見ていきましょう。
RAID1(ミラーリング)の特徴
RAID1(ミラーリング)は、2台以上のHDDを組み合わせて、各HDDに同じデータを記録する仕組みです。同一のデータをそれぞれのHDDに持つため、鏡になぞらえて「ミラーリング」とも呼ばれます。
同一データを各HDDに持っているので、1台のHDDが壊れても他のHDDで稼働できるのが特徴です。ただし、同じデータを各HDDにそれぞれ記録することから、実質的に利用できる容量は低下します。例えば、2TBのHDD2台構成の場合、合計容量は4TBですが利用可能な容量は1台分の2TBになります。
RAID0(ストライピング)の特徴
RAID0(ストライピング)は、複数台のHDDに分散してデータを記録する仕組みです。複数台のHDDにまたがってデータを記録することから、複数の並行模様である「ストライプ」になぞらえて「ストライピング」とも呼ばれます。
それぞれのHDDの合計容量が使用可能容量となるため、構成するHDD台数が多ければ多いほどたくさんのデータを記録できます。しかしその反面、HDDが1台でも壊れるとデータ読み書きや復旧ができなくなってしまうのが難点です。
RAID10(RAID 1+0)の主なメリット
ミラーリング(同一データの複製)機能とストライピング(データの分散記録)機能を併せ持ったRAID10は、RAID1とRAID0のデメリットをカバーできる仕組みとなっています。
ここからは、RAID10(RAID 1+0)のメリットについて詳しく見ていきましょう。
高速化と容量最大化が確保されている
RAID10では、構成された複数のHDDへデータを分散して記録します。RAID10は4台以上で構成するのが基本であることから、HDD台数を増やすほど、利用可能なデータ容量を最大化できる点がメリットです。また、HDDの台数が増えるほど複数のHDDへ同時並行でアクセスできるため、読み込み速度が高速化します。
一方、書き込み速度の方は、データを複製して複数のHDDに書き込む処理が必要なため、高速化はさほど期待できません。また、ミラーリングをしているので、実質的に利用できるデータ容量は半減します。
耐障害性が確保されている
RAID1と同様、RAID10のミラーリングにおいても、同一データを複製して複数のHDDに記録します。ただし、RAID1では2台のHDD構成で1台のHDDに複製データを記録するのに対し、RAID10では2台1組の構成を2セット以上用意できるのです。
<HDD構成の違い>
RAID1:HDD2台で1組の構成
RAID10:HDD2台で1組の構成×2セット以上可能
RAID10では、ミラーリングされたHDDのセットが同時に壊れない限りは、稼働し続けることが可能で、障害が発生したときの耐性が高まります。
RAID10(RAID 1+0)の主なデメリット
RAID10は、RAID1とRAID0の良い点をうまく組み合わせたRAID構成ですが、デメリットがないわけではありません。
RAID10のデメリットは主に以下の2つです。
- 導入コストが高くなる
- HDD容量の利用効率が低い
ここからは、それぞれのデメリットについて説明していきます。
導入コストが高くなる
RAID10は必要となるHDD台数が多いため、導入コストが高くなるというデメリットがあります。RAID10では、ストライピング(データの分散記録)を2台のHDDで行い、それぞれのHDDにミラーリング(同一データの複製)をするために2台と、合計4台のHDDが必要となるからです。
このように、RAID10を構成するためには最低でも4台のHDDが必要であり、さらに容量を増やす場合には、使用可能な容量の2倍のHDDを用意しなければなりません。
HDD容量の利用効率が低い
RAID10では、用意したHDD台数分の合計容量がそのまま使えるわけではありません。RAID10では最低4台のHDDが必要となりますが、例えば、4台の構成の場合、HDDのうち半分はミラーリングで使用されるため、実際に使えるのはHDD2台分の容量のみです。多くのHDDを用意したとしても、実際に使用できる容量は半減してしまうので、利用効率は低くなります。
RAID10とRAID5の違いは?両者の特徴を比較
RAID10とよく比較されるRAIDレベルに、RAID5があります。
混同されやすいRAID10とRAID5ですが、以下のような違いがあります。
- 必要なHDD台数の違い
- パフォーマンスの違い
- 安全性の違い
ここからは、両者の違いについて詳しく見ていきましょう。
必要なHDD台数の違い
RAID10とRAID5の違いの一つは、RAID構成に必要なHDDの台数です。RAID10では4台のHDDが最低でも必要なのに対し、RAID5では最低3台のHDDで構築できる点が異なります。違いの要因はRAID構成の仕組みによるもので、RAID10はストライピング(データの分散記録)に2台と、それぞれのミラーリング(同一データの複製)で2台の合計4台が必須です。
一方のRAID5では、ミラーリングはなく「パリティ付き」でデータが分散記録されます。パリティはエラーを修復するための冗長データのことで、パリティ値から元のデータを復旧できる仕組みです。RAID5では、HDD1台分にパリティを保存し、残りのHDDへデータを分散記録します。
パフォーマンスの違い
RAID10とRAID5では、パフォーマンスの面でも違いがあります。RAID5ではデータの書き込みや更新を行った際に、同時にパリティを新規作成または更新する必要があるため、その分、RAID10に比べるとHDDへの書き込みパフォーマンスが落ちます。
安全性の違い
RAID10は、ストライピング(データの分散記録)した全てのHDDに対してミラーリング(同一データの複製)のHDDを持つため、安全性が高いという特徴が挙げられます。つまり、RAID10では、同じデータを持つHDDが2台ずつ存在し、いずれかのセットで1台のHDDが故障しても残りのHDDが無事であれば、運用・復旧が可能です。
一方、RAID5はミラーリングをせず、2台以上のHDDへデータを分散記録しています。例えば、3台のHDDで構成している場合には、1台のHDDが故障してもパリティと残りのHDDで運用は可能ですが、HDDが2台壊れてしまうと運用不能となってしまいデータの回復ができません。
RAID10とRAID6の違いは?両者の特徴を比較
RAIDレベルの中でも、RAID5と同じく使われることが多いのがRAID6です。RAID6はパリティを二重に生成し、RAID10と同様に最低4台のHDDを必要とします。
ここからは、RAID10とRAID6について以下の3点から比較してみます。
- 必要なHDD台数の違い
- パフォーマンスの違い
- 安全性の違い
必要なHDD台数の違い
RAID10とRAID6では、4台のHDDが最低でも必要となる点は同じですが、それぞれのHDDの使われ方が違います。
RAID10は、ストライピング(データの分散記録)のために2台、そして分散されたそれぞれのHDDのミラーリング(同一データの複製)で2台、合わせて4台使います。一方、RAID6の場合も合計4台ですが、パリティデータを2台のHDDに保存し、残りの2台はデータを保存するのです。
パフォーマンスの違い
RAID10とRAID6の違いはパフォーマンスの面にも現れます。RAID6はデータの書き込みや更新を行った際、同時に2台のHDDへパリティを作成・更新する仕組みですが、さらにパリティのバックアップまで生成しているのです。そのため、RAID10はもちろん、RAID5に比べてもHDDへの書き込みパフォーマンスが落ちる傾向にあります。
安全性の違い
安全性の面においても、RAID10とRAID6には違いがあります。RAID10では、分散した全てのHDDに対してミラーリングのHDDを持つため、分散したHDDの1台が壊れてもミラーリングしているHDDが稼働していれば問題なく使用可能です。
また、分散しているHDDの方であれば、たとえ2台が壊れたとしても、ミラーリングしている2台が壊れていなければ問題なく運用できます。
一方、RAID6はミラーリングを持ちませんが、パリティを二重に保有しています。そのため、2台が故障しても、残った2台のいずれかにパリティデータが存在していれば、残りのデータで問題なく使用できます。しかし、3台以上のHDDが壊れてしまうと運用不能となり、データの回復も難しいでしょう。
RAID10でデータ復旧する際の注意点
RAID10で構成されたHDDが故障してしまった場合、その復旧の際には注意すべき点があります。「復旧できたはずのデータが復旧できない…」ということを避けるため、十分に注意してください。
ここでは、以下の4つの注意点について詳しく見ていきましょう。
- HDDの順番は入れ替えない
- RAIDレベルを変更しない
- 安易にリビルドしない
- 安易にフォーマットしない
HDDの順番は入れ替えない
RAID10で構成されたHDDは各スロットに挿入されていますが、HDDの交換時にその順番を入れ替えないよう注意しましょう。どのスロットにどのHDDが挿入されているか、という情報も含めて管理されています。
このHDDの順番を入れ替えてしまうと、どのHDDにどのデータが保存されているか、情報の整合性がとれなくなりRAID構成を保持できなくなってしまうのです。
HDDの入れ替えの際は、同じスロットに挿し替えるのが基本です。
RAIDレベルを変更しない
RAIDレベルの変更は、データの破損につながってしまい危険です。RAIDレベルが変わると、これまでそれぞれのHDDに保存していた情報の整合性がとれなくなり、データへのアクセスができなくなる事態に陥ることがあります。
HDDやRAIDの障害の場合、「気持ちが焦ってしまい、誤ってRAIDレベルを変更してしまった」ということもあり得ますので、十分に注意しましょう。
安易にリビルドしない
HDDに障害が発生した場合、その対処法としてリビルト(障害が発生したHDDを除いた他のHDDからデータを再構築すること)を行う場合もあります。しかし、リビルドはHDDに与える負荷が高い作業であり、リビルドによる高負荷が原因となって正常なHDDに障害が発生する、もしくはリビルドに失敗してしまう懸念もあるのです。
安易にリビルドを行ったことで、さらに状況を悪化させないためにも、リビルドを実施する際は慎重に行わなければなりません。
安易にフォーマットしない
HDDに障害が発生した場合、そのHDDをフォーマットして使おうと試みることがあるかもしれませんが、安易にフォーマットを行うのは危険です。フォーマットを実行するとHDDの内容が全てクリアされるので、RAID情報や必要なデータなど大切な情報も削除される可能性があります。安易なフォーマットはしないよう注意しましょう。
メリットとデメリットを理解した上でRAID10を使おう
RAID10は、RAID1とRAID0のメリットを併せ持ったRAID構成であり、高速化と耐障害性を確保しています。もちろんデメリットがないわけではありませんが、そのデメリットを補うだけのメリットをRAID10は持ち合わせているRAIDレベルです。
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